この瞬間を懸命に生きる

あけましておめでとうございます。旧年中は、たいへんお世話になりましたこと、御礼申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。今日は七草ですので、さすがにまずいと思って、今年最初の記事を書いています。

今年は、「この瞬間を懸命に生きる」ということを心に置いてがんばります。

さて、私の好きな曲に、「I've never been to me」日本語の題名が「愛はかげろうのように」という曲があります。美しいメロディーで、歌っているシャーリーンの声もすばらしいです。実は、今日、この曲の歌詞の意味を初めて知りました。あまり真剣に歌詞を聴いていなかったのですね。反省しています。そして、この歌詞を見て、泣いてしまったのです。女性についての歌ですが、ほとんど同じことが男性にも当てはまります。
http://blogs.yahoo.co.jp/vangardthirty/21747230.html
要は、「幸せは自分の日常の中にしかありえない」ということです。これは、さまざまな文学のテーマになっています。メーテルリンクの「青い鳥」。上田敏海潮音に収録されている、カールブッセの「山のあなた」。どこか遠くに楽園があるわけもなく、ただただ、幸せは日常の中でしか得られないということです。

では、日常の中でしか幸せが得られないということはどういうことでしょうか?日常を幸せにするためにはどうすればよいでしょうか?日常というのは、今、自分が生きている、この場所、この瞬間のことです。人間というのは、この時代と、この場所に縛られて生きているのです。そして、それによって生まれた人間関係や社会の中で生きているのです。つまり、今この時代を、今この場所で懸命に生きるしかないのです。この当たり前のことを勘違いすると不幸の始まりになります。「どこかにいい場所(楽園)があるに違いない。」と思い続けるほど不幸なことはありません。

よく、「過去と他人は変えられない」といいます。これはその通りです。しかし、実は、未来も変えることはできないのです。今、10年後の未来を変えてくださいと言っても変えられないですし、意味不明です。では、変えられるのは何か?「今この瞬間、ここにいる自分」だけを変えることができるのです。ここにいる自分が行動を起こせば、何かが始まるかもしれませんが、他人が行動を起こすことを期待していたら永遠にそれは起きない可能性が高いのです。


産総研の和泉憲明先生に教えていただいたのですが、「良い研究を探して世界中を歩き回ることを、昆虫採集という。どこかにもっとすばらしい研究があるかもしれない。でも実はないのです。無駄です。」研究の場合は特に、問題を考えたらまず自分で解いて、あとから過去の文献をたどったほうがずっと仕事が早いのです。実は研究だけではありません。自分で徹底的に考えて仕事をしたほうが成果が出ます。自分がやろうとしていることを過去の誰かの答えに頼ろうとすると仕事ができなくなります。自分で仕事を片付けるといってなかなかできない人がいます。そういう人の多くは、職場の同僚ではない人間、つまり、「過去の人間、そして職場以外の人間」の考えを流用するための調査に勤しみます。これは全くの無駄です。むしろ、職場の同僚や先輩、優秀な後輩に素直に訊くのが一番早いのです。自分の面子を守るために職場で我を張ってプロジェクトを停滞させるのはやはり好ましいことではありません。そして、自分で答えをだし、みんなに聞いてもらって、みんなから出た批判は一旦謙虚に受け止めることが大切です。よく聞いて相手の言っていることを理解してから反論を初めても、ちっとも遅くないのです。反論は後からでもできますが、その批判は今、この瞬間にしか聞くことができないのです。


やはり、「今、ここで、自分が懸命に考えて生きる」ことが大切だと思います。私は今年はそのように生きます。こんなことを書いていますが、このことに気付いたのは40歳になってからです。そして、この正月にやっとこういうことが書けるようになりました。


昨年亡くなった、スティーブ・ジョブズが、スタンフォード大学で行った演説の中に、有名な「今日が人生最後の日なら、今日する予定は本当に自分がしたい事だろうか?」という一節があります。この言葉は、ジョブズが「今、ここでのこの瞬間」を常に真剣に生きてきたから発せられる問いだと思います。今ここで頑張れない人、今ここでできない人、今ここではじめられない人は、いつになってもどこへいっても頑張れない。できない。はじめられない。のです。これは、私の妹と妻がよく口にする言葉です。実際に言われるととーーってもきつい言葉ですが、このお蔭で日々仕事が捗っています。


日常、周りの人の言葉を大切に受け取りながら、この一年を過ごします。改めて、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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