コンテキスト・コンピューティングを実現するための技術要素

こんにちは。湯本正典です。

先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)
コンテキスト・コンピューティング研究部会(CC研究部会)で
サブリーダをしています。

この研究部会では、以下の計画で活動しています。
http://aitc.jp/wg/context/plan.html

さて、コンテキスト・コンピューティングを実現する技術要素ですが、「コンテキスト」がちゃんと理解できるような思考技術を持っていることがまず重要であって、さらに、「コンピューティング」を実現するための情報技術(IT)の両方が必要です。現在の状況を考えて見ますと、私も含めて、ITが高度になったために、そちらの知識や技術を習得するに当たって必死になっている場合が多いです。しかし、ITは、ある目的を達成するための手段であって、目的にはなりえないのです。手段のほうに熱心になりすぎるあまりに、目的のほうがおろそかになっては何の意味もないのです。IT屋としては皮肉ですが、「ITが存在するのが分からないくらい、便利なIT」を目指す。「空気のようなIT」を目指す。それがコンテキスト・コンピューティングだと思います。

このようなことを書くと、それは、「ユビキタス・コンピューティング」に近い考えですか?ということをいってくださる方がいらっしゃいます。そうです。「ユビキタス・コンピューティング」にとても近い考え方です。
さらに、私が、コンテキスト・コンピューティングの基礎技術として、「セマンティックWeb」がある。「自然言語処理」が重要。などと申しますと、「結局、人工知能ですか?」ということを聞いてきてくださる。また、「エキスパート・システム」と何が違うのですか?というご質問もいただきます。何も違うことはありません。「人工知能」、「エキスパート・システム」、目的とするとことはほぼ一緒です。システム(コンピュータ)と人間のコミュニケーションを円滑にすること。そうして、より「賢い」コンピュータを創ること。目的は同じです。

その先のご質問は、「そういう、人工知能やエキスパート・システムって失敗していますよね。」という否定的なご意見のご質問です。これには、「現在のITの環境が、当時とは全く違う!」と申し上げています。今は、コンピュータをより賢くするチャンスです。

なぜか?「クラウド」の時代、「データ爆発」の時代だからです。
クラウド時代の、豊富なITリソース、すなわち、ハード(ディスク、メモリ、CPUなど)の豊かさ。アプリの豊かさ。そして、人財の豊かさ。こんな時代は過去にはなかったのです。特に、これだけ多くの人がITを手にする時代が来るとは、思ってもいませんでしたよね。
そして、それに伴う上位レイヤーの出来事。「データ爆発」です。Web上のデータが豊富すぎて、取り出してくることができない。なぜみんなが、わたしもふくめて、こんなに、情報をWebに投入するのか?(その一方で社内システムに情報を投入しないのは、なぜか?)「情報へのアクセシビリティー」が問題になっています。「データへのアクセシビリティ」は非常によくなっているのに、「情報へのアクセシビリティ」が非常に悪くなっているのです。「データ」と「情報」の間の違い。それが非常に大きくなっているのが現代です。

前置きが長くなってしまいましたが、技術要素は、

1.「クラウド」、「データ爆発」という時代の問題を解決するための、情報通信技術。
2.「エキスパート・システム」、「ナレッジ・マネジメントシステム」、「グループウェア」といった、企業知を扱うための、システムの分析・設計・実装の技術。
3.「人工知能」、「ユビキタス・コンピューティング」といった、賢く便利なコンピュータを目指すための、計算機技術。
4.「言語」、「数値」、「画像」、「映像」といった表現手段を上手に扱うための、表現技術。
5.「インターフェース」(人とマシン、マシンとマシン、そして人と人、などの間)を上手につなげるための、接面技術。

こういう、技術が必要となります。
そして、そのときの「情報伝達」のための共通プロトコルのような技術になるのが、セマンティックWebから発達した、セマンティック技術なのです。

ちょっと抽象的になりすぎましたが、これから、折に触れて、こういった技術を実現するための細かな技術要素について書いていこうと思っています。


【次回の予告】
データ爆発とコンテキスト