Integrationということ。そして現代の課題。

Integrationということ。そして現代の課題。(旧ブログから再掲)

Integrationという言葉を初めに理解したのは、英語の授業ではなく、数学の授業でした。もちろん、「積分」という意味です。英語では、辞書に、「統合、完成」なんていう意味が載っています。「積分」と「統合」が直結しませんでした。意味として。今、私は、SIerで働いています。SIとは、System Integrationの略ですが、「システム統合」とでも訳すので
しょうか。でもなんとなくイメージがピンときません。
積分」「統合」「SI」。やっていることは何なのか?
結論から言うと、今持っているイメージは、
「全体をバラバラにして要素に還元し、その後にその要素をまた組み合わせて統合する、そのときの統合のこと」
ということです。
積分」。私は物理学専攻でしたから、物理の微分方程式積分して解いていました。これは何をやっているのか。物理では、巨視的現象や、連続した構造などを、一度、その構成要素に分解し、まず理解します。そのバラバラにした構成要素間の微視的関係を表現したのが物理の微分方程式です。その微視的構成要素と関係を、全部「統合」してもう一度、巨視的なものを理解する方法、それが、微分方程式を「積分」すること、つまり、微視的要素を「統合」して理解することなのです。
さて、System Integration。これも、システムを、その構成要素に一度分解し、もう一度全体像を設計して「統合」すること。そんな感じです。

本題はここからなのですが、Integrationというのは、かなり難しい作業です。構成要素に分解する方が簡単で、それをもう一度統合するのは大変難しい作業なのです。一番わかりやすいのは、ジグソーパズルかもしれません。バラバラにするのは簡単ですが、もう一度もとの図に戻すのは大変です。もうちょっとメカニックなことを考えてもいいです。時計をバラバラに分解して元へ戻す。ラジオやテレビを分解してもう一度元へ戻す。バラバラにする方が簡単ですが、「統合」Integrationが難しい。そして、Systemもそうです。分解する方が簡単で統合するのが難しい。それから、数学のIntegrationです。微分解析的関数ならどんな場合でも出来ますが、積分はすべてが解析的に出来るとは限らない。微分より積分の方がずっと難しいのです。そして、物理。物理は還元主義を用いて、分子や原子、さらにもっと素粒子へと分解して成功を収めましたが、そこからもう一度巨視的(日常的)現象に戻すのが大変。もちろん、階層性の問題とかもありますが、それを抜かしても、連続的にでも、巨視的現象に戻すのは難しい。むしろ階層性があるから理解できるこぁw)€毆)€ニもいっぱいある。こんな物理の還元主義がいろいろなところに応用されています。今一番面白い、ホットな話題は、生命科学や経済学かもしれません。これらは、還元主義で物理の後をちょっと遅れて発展してきました。そして成功を収めつつあります。でもどうでしょう。物理も結局、Integrationで行き詰っている。きっと、生命科学も経済学もそこに大きな壁があるのです。生命科学では、DNAはわかったけれど、そこから生命体やその構成要素である臓器などを統合するのも困難。経済学もミクロ経済学と、マクロ経済学は連続的にどうつながるのか。なかなか難しい問題です。

で、20世紀は還元主義で成功を収めた時代ですが、21世紀は、それを統合する時代だと思うのです。統合Integrationには、きっと大きなブレイクスルーが必要でしょう。かなりの難問です。微分は出来るけれど積分は出来ない。そんな感じで、なかなか大変なのです。ということで、Integration。これこそが21世紀の大きな課題になっていると思うのです。挑戦しましょう。

※ この記事は、湯本正典の個人の見解です。