自然災害と政治史

1年ほど前に、アイスランドの噴火がありました。たしか4月、5月とヨーロッパの空路が麻痺したと記憶しています。
アイスランドの火山噴火
東日本大震災での被害があまりにひどかったので、日本ではあまり報道されていないかもしれませんが、今年の5月21日に、アイスランドで、また別の火山が噴火して、ヨーロッパで飛行機の欠航が相次いだようです。

自然災害と政治の歴史とは、学校で習う科目としては、お互いにあまり関係ないためか、重ねて習うことは少ないように思います。しかし、大きな自然災害は時として一国の政治をひっくり返すほどの影響力を持ちます。

まずは、日本の例です。今回の東日本大震災と非常によく似た地震が、869年(貞観11年)の貞観地震津波です。東北地方での大震災であり、その前後では、火山が噴火したり、疫病がはやったりで大変だったようです。

貞観地震の1100年前はどんな時代? 動乱に揺れた平安貴族

平安の貴族政治の時代でしたが、政界にも大変な激震をもたらしたそうです。また、この地震の被害者の供養のために京都の祇園祭は始まったとされているようですから、本当に大きな影響をもたらしたのだと思います。

次に、これは、去年のアイスランドの噴火のときにも書きましたが、1783年から始まったアイスランドの大噴火です。この時は、ヨーロッパ中が火山灰に覆われ、作物ができずに飢饉になったようです。この食糧不足のため、民衆の不満が鬱積して、最終的には、1789年のフランス革命を引き起こしたようです。もちろん政治の問題が大きいのでしょうが、この自然災害が遠因となったことは否めません。「パンをくれ」と王宮に集まった民衆の気持ちも理解できますね。ちなみに、この1783年には、日本でも岩木山浅間山が噴火して、異常気象が起こり、天明の大飢饉になります。当時、幕府の財政が傾き、田沼意次がインフレ策をとっていたので、この大飢饉の影響は甚大で、結局このまま江戸幕府は財政の立て直しができないまま、衰退し、滅びてしまいました。

最後に、この1783年のアイスランド大噴火からさかのぼること約30年。1755年のリスボン大震災についてです。
ポルトガルといえば、大航海時代(1400年ころから1500年ころ)にも大きな役割をはたし、日本にも戦国時代鉄砲(1543年)を持ち込むなど大きな影響力がありました。ところが、1588年に同盟国であるスペインの無敵艦隊がイギリスに敗れると、どんどん国力が低下します。それでも、南アメリカのブラジルには大きな影響力を持ち大国を維持しますが、この1783年のリスボン大震災で、首都のリスボンは壊滅的被害を受けてしまい、ポルトガルの国力はさらに衰退していきました。1825年にはブラジルの独立を認めます。このような感じで現在のポルトガルに至ります。

このように見てまいりますと、日本のこの大震災後の対応は批判されますが、まだ秩序を保っているほうではないでしょうか?しかし、これからが正念場です。このまま政治が混乱して国力の衰退を招くのか?戦後のような目覚ましい復興を遂げるのか?私たち国民一人一人が、むだないがみ合いなどせずにがんばることでしょう。日々けんかは無駄なエネルギー消費と思って過ごしています。
そして、文系理系などという学問の区分が、これまたいかに思考の妨げになっているかと感じざるを得ないのです。