第24回セマンティックウェブとオントロジー研究会のナイトセッション(ICT革命の本質についての仮説)

こんにちは。湯本です。しばらく、このブログをお休みしてしまいました。間隔があいてしまいましたね。
実は、先週の水曜日、木曜日(6月22日―23日)に「第24回セマンティックウェブオントロジー研究会」に参加しました。この研究会は、浜名湖舘山寺温泉で行われたました。私も口頭発表したのですが、その内容の準備に手間取り、ブログを書く時間が確保できませんでした。相変わらず、仕事の見積もりや、見通しが甘いのは、いけないことだと反省しております。


さて、第24回セマンティックウェブオントロジー研究会の表バージョンについては、下記のページをご覧いただくとして、
第24回セマンティックウェブとオントロジー研究会
その1日目の夜に開かれた、ナイトセッションのお話を少ししたいと思います。これは、みなさんで車座になってざっくばらんにフリートーク(悩み事相談?)をする会でした。

そこでやはり話題になったのは、セマンティックWeb実現のためには、オントロジーか?LOD(Linking Open Data)か?という議論になりました。私は、現在オントロジーの利活用について研究していますし、また、情報処理の3月号のLOD特集に記事を書いた手前もあり、どちらも肯定したいのです。なぜ、そう思うかというと、それは、自分の仕事にも表れていて、医学情報のような確度の高い情報は、オントロジーで整理し、一方で、娯楽メディアのコンテンツのような趣味嗜好の知識は、もっと集合知を活用したLODで知識を整理した方がよいのではないか?と思うのです。たとえば、「レコメンド」という機能を考えたとき、医療従事者に対して「おすすめの治療法は、これ!」なんて出てきた日にゃ、とんでもないことになります。医療情報は、ずーっと確度の高い情報が必要なのです。前から考えてきた、専門家のためのオントロジー、趣味嗜好のためのLODという基本は、いまでも変えることはありません。では、その時のシステムの効用は何か? このナイトセッションで先生方の討論を拝聴しながら考えていました。

そして、自分は、コンピュータとは、そもそもどういう効用を持っているのか?ということを考え始めたのです。その時に考えたことは、

コンピュータを計算機と考えた場合:決められたことを正確に、何度でも、繰り返し行う。たとえ高度なことであったとしても。考えを変えてはいけない。
コンピュータを通信機器と考えた場合:通信機器の上を通る情報は、人間同士の対話の情報。対話によって、人間同士自体、考えが変わるし、それによって、社会も変わる。


という仮説でした。要は、Webによって、コンピュータが通信機器に変わったとき、その瞬間、パラダイムシフトが起こったのです。それが、ICT革命の本質なのでしょう。

いままで、コンピュータは計算機として、工場の機械のように、人間に代わって、難しい作業を、繰り返し続けて行う、つまり、コンピュータで取り扱う情報は「変わらない」ことが本質でした。
しかし、コンピュータが通信機器として働き始めた途端、コンピュータで取り扱う情報は「変わることに価値がある。」となったのでした。
この変化は大きいと思いませんか?


だから、専門家用のシステムには変わらないオントロジー、みんなが参加するオープンなWebシステムとしては変わりやすいLODということではないか?と思っています。


まだ仮説段階なのですが、これをそのナイトセッションで発言申し上げたところ、意外と好評でした。



ところで、私は、「いつでも、どこでも、だれでも使えるITで、いまだけ、ここだけ、あなただけのサービスを」というキャッチフレーズのもとで活動しております。
前半の「いつでも、どこでも、だれでも」というのは、「変わらないこと」
後半の「いまだけ、ここだけ、あなただけ」というのは、「常に変わり続けること」
を暗黙の裡に秘めていると思います。
いつも変わらず高品質の商品を提供するのが工業(第2次産業)の本質であり、
お客様に合わせて、臨機応変に対応するのがサービス業(第3次産業)の本質とは考えられないでしょうか?


おそらく、ICT革命でコンピュータが通信機器になったとき、このように第2次産業から、第3次産業への急速なパラダイムシフトがさらに加速されたのでしょう。


こんなお話を申し上げたところ、みなさまから、望外の賛同をいただきました。表のプログラムのプレゼンよりも、裏のナイトセッションに参加させていただいて、やっと私も少しだけお役にたてた気がしました。


最後に、情報ですが、情報のコンテンツは一方通行でないと儲かりません。当たり前のことですが。
映画、ラジオ、テレビ、書籍、CD、ビデオ。。。情報(コンテンツ)の流れが一方向(提供者からユーザへ)だから金がとれるのです。
同じ通信でも、電話のような双方向だと、その上を流れる会話のようなコンテンツは"だだ"で、値段が付きません。
つまり、Web2.0というのは、コンテンツで儲けるのがきわめて厳しい世界なのです。電子書籍の商売などはこの点には気を付けないといけないでしょうね。


【悩み事】
ちなみに、一方向の情報提供がビジネスになると気づいたのは、1920年アメリカで大統領選挙があったとき。
それまでの、双方向無線通信機を使って一方的に大統領選挙の結果を伝えたことからだそうだ。
双方向通信をあえて受信機能に限定して売ったところからラジオが誕生した。
さて、この情報のウラを取ろうとしたが見つからなかったので、現在ちょっと困っている。