2011年上半期を終えて、そして下半期に突入して。

4月に大江先生の研究室に採用していただき、ちょうど半年がたちました。大江先生はじめ、研究室の先生方には、本当にたくさんの貴重なご指導を賜りました。御礼申し上げます。また、セマンティックWeb委員会、LODチャレンジ実行委員会、先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)でも、多くの研究者、企画関係の先生方、優秀なIT技術者と知り合うことができ、とても有意義でした。LODで学んだように、人と人との絆(つながり)の大切さを知りました。



結局は、ソーシャルネットワークがいかに重要かということです。これは、ネットワークの概念でいうと、「ノード」よりも「リンク」の重要性に気づき始めた証拠です。つまり、社会では、「個人」よりも「個人同士のつながり」つまり、人脈とか、コミュニティとか、同好会とか、クラブとか、そういうことの方が実は重要なのではないかという、日本人にとって極めて自然な、当たり前のことに気づいたのです。また、私の出身の分野である物理学では、素粒子よりも、その相互作用が重要であると考えることもあります。統計物理、物性理論で学位を頂いた私としては、この流れはとても自然に思えます。



さて、社会を見ると、どうも、西洋の作った社会システムがおかしくなっているようです。金融システムをはじめとした経済システム、さらには、西洋的な国家のシステムまでおかしくなろうとしています。なぜでしょうか? これら「西洋」のシステムの思想の基盤にあるのが、「個人主義」です。個々の人間自体の存在が重要であり、その権利を守ること。それが重視されていたのです。しかし、それよりも大切だったことは、社会のつながり、人と人とのつながり、絆だったと、最近改めて人々が気づき始めたのだと思います。そして皮肉にも、それを認識させてくれたのは、西洋科学の粋を集めて実現した技術である、現代のIT(情報技術)だったのです。また、日本では、この大震災以降、現実社会における絆がいかに大切かを思い知ることができます。



このように考えてみると、社会を中心としたと考えられる「社会主義」という思想でさえも、社会はそこで生活する個人のために存在していたと思えるのです。社会主義のように、トップダウンで与えられる社会ではなく、ひとりひとりが自主性をもって地道に築き上げていくボトムアップ的な社会形成が、本当に求められているのだと思います。そして、このボトムアップ的な人脈により社会を築いていくことは、実は日本人の性格にあった、慣れ親しんだ社会の形成の仕方ではないでしょうか?


実は、今、日本にとって、今までにない「チャンス」が到来していると、私は感じるのです。絆やご縁、ご近所さん、世間様、といった日本で大切にされてきた美しい概念がグローバルスタンダードになる時代が来たのだと思います。



こんなことを感じながら、2011年の上期を終えました。やっといろいろと上期の整理が着きつつあるところです。下期の研究活動に入りますが、今後ともみなさまのご指導をよろしくお願い申し上げます。