オイラーの公式と複素平面での回転

一昨日の議論の中で、自分でのちょっと端折ってしまったなあ、と思うところがあります。

> オイラーの公式をみれば、cosとsinが入っているので、何となく回転に関することだと思いますし、そして、実数軸、虚数
> 軸をx軸、y軸とそれぞれ考えれば、それは、2次元平面での回転を示していることがわかります。そして、2次元平面の回転
> を理解するためには、行列という代数の考えを使うとわかりやすかったですね。ここへ来ると、さらに、代数の知識が必要
> なのです。

この部分は、かなりあやふやな記述でしたので、改めて説明するところから今日は始めたいと思います。

まず、xyの2次元平面での回転の式を書いてみましょう。

そして、一昨日書いたように、線形代数の行列の知識を使って、これを行列表現すると、

となります。この、右辺の行列が、2次元の回転行列です。


さて、ここで、このxとyを用いて複素数を導入しましょう。複素数zは、

ですね。そこで、これを複素平面で、回転することを考えます。


つまり、 z' = (複素平面の回転の表現)× z  となる(複素平面の回転の表現)を考えればいいのですが、z' = x' + i y' ですから、これに、2次元の回転の式を代入して式変形します。

ここで、 z = x + i y ですから、結局 (複素平面の回転の表現)= cosθ + i*sinθ ということがわかります。

さらに、一昨日でてきた、オイラーの公式

を思い出すと、(複素平面の回転の表現)= exp(iθ) であることがわかります。 

これが、一昨日、

オイラーの公式は、複素平面の原点の周りの回転を表している!

と書いたことの顛末です。

そして、自分のイメージでは、もう複素平面の上で、時計の針が逆回りにぐるぐる回っているのですが、ちゃんと説明しようとすると、このように長い式変形をして、くどくどと説明しないといけないのですね。これが幾何学の厄介なところであり、面白いところです。

しかし、ここまできて、一昨日の表現をみると、ちょっといい加減すぎるきらいがあります。
正確には、

オイラーの公式は、exp(iθ)が複素平面の原点の周りの回転の表現であることを表している!

なのでしょうね。
私も一昨日は、完全にイメージだけで書いていましたが、こうやって、ちゃんと数式を追ってみると、説明の精度がちゃんと上がります。

このように、イメージを言葉にして、そして数式にして、さらにイメージしてみる、この繰り返しがとても大切だと思います。



最後に、2次元平面の回転は「行列」なのに、複素平面の回転は「式」でかけるのはなぜ?と思うかもしれません。
これは、複素平面の場合、虚数単位「i」を導入したので、複素平面での回転は「式」でかけるのです。
こうやって理解するといいかも知れません。
実数軸方向に、単位ベクトル「1」、虚数軸方向に、単位ベクトル「i」を導入して、zというベクトルを、
z = 1*x + i*y
と示しましょう。ここで、「1」は自明なので省略すると、
z = x + i*y
となり、z、つまり複素数は、ベクトルのような性質も持ち合わせていることがわかります。しかし、「数」であるところがポイントで、ベクトルの変換である行列を、数の変換の式で、見た目、表現できることになるのです。



だったら、
w = x + i*y + j*z
のように、拡張できるか?というのは、難しい問題です。単なるベクトルの基底だとこれでいいのですが、虚数の場合だと、「iの2乗は-1」を課しています。したがって、この概念を、三元数に拡張することは、難しい問題なのです。三元数という言葉を使ってしまいましたが、複素数のことを二元数と呼び、それを拡張した概念です。