気象庁防災情報XMLの実証実験システム勉強会

今日は、先端IT活用推進コンソーシアムの会合で、気象庁防災情報XMLを使った実証実験の勉強会がありました。昨年、2010年3月10日に、これらの実証実験のお披露目会があったのですが、その時は、まさか、その1年後、2011年3月11日に、日本がこのような甚大な自然災害に遭うとは思ってもみませんでした。当時は、技術的な実証実験のみで、社会的な影響などは全く考えていませんでした。まだまだ構想段階で、そのうちのいくつかを、IT技術を用いて実装したといった感じです。
http://xmlconsortium.org/seminar09/100310-11+16-18/100317-prog.html
http://xmlconsortium.org/seminar09/100310-11+16-18/100318-prog.html

しかし、今日、改めて復習してみると、これはなかなか有益なのではないかと思えるシステムがありました。参加者のみなさんもおっしゃっていましたが、「震災があって初めて、このシステムの意味が分かってきた。」ということで。私もそうです。このシステムがあったら。。ということを現実味をもって評価することができました。

この実証実験で、「安否情報確認」のシステムが考案されていました。スマート端末を、町のステーション端末にかざすと、自分の知り合い(電話帳に入っている人)の安否確認ができるという方法です。ステーション端末同士のネットワークが切断されていても、人が運ぶスマート端末にステーションの情報をすべて取り込み、また別の場所のステーション端末にかざしたとき、そのステーションにすべてのデータが格納されます。ステーション端末の中のデータは統合され、整理されて保存されています。こうすることにより、ネットワークが切断されても、人が歩くことによって、情報がステーション間を移動していくというシステムです。もちろん個人情報、セキュリティ、スマート端末に取り込まれたデータの消去など問題点はたくさんあります。でも、人がリアル空間を情報をもって運ぶというアイデアはとても重要だと思いました。

さて、防災情報は、どうやって生成されるのか、改めて考えてみました。気象庁さんから災害の現況や予報の情報が発信されます。そして、地方自治体がその情報に基づいて避難情報を出します。住民の安全を確保する役割は地方自治体が担っているからです。そして、住民はその情報をもとに避難します。「気象庁」、「地方自治体」、「個人」、この3つのデータがつながらないと、防災情報にはならないのです。さらに、その情報を個人が受け取ったとき、どういう行動を次にとればいいかの指示まであればいいという意見も出ました。

そこまでいかなくても、この3つの情報は少なくとも連携しなければならないのです。現在「気象庁防災情報XML」ができ上がっていて、電文のデータ形式は定まっています。しかし、地方自治体の、たとえば、「避難場所XML」や「避難誘導XML」はおそらく存在しませんし、個人のプロファイルを整理するための「個人情報XML」も定まっていません。仮にこれらのXMLが整備され、データが蓄積されたとして、正しく情報が伝達されるだろうか?という疑問がその先にあります。

これは非常に重要で深刻な問題と思っているのですが、この3つのフォーマットの「メタデータ」(XMLタグ)同士が、どのように意味的につながっているか、という全体のスキーマがなければ、意味情報の連携はできないのです。この、「XMLタグ同士の意味的なつながり」を保持しておくのが、まさに「オントロジー」なのです。

これは、私の本職である、臨床医学オントロジーと同じ役割を果たします。医療の場合ですと、電子カルテシステムなどの医療システムがありますが、これらのシステムの間で情報連携をスムーズに行おうとすると、「このシステムのこの情報は、違うシステムのあの情報とつながっている」という意味関連情報がないといけません。その一つが臨床医学オントロジーです。たとえば、気象庁さんを「厚生労働省」や国の機関として、地方自治体は、「地方自治体」や「地域の医療団体」であり、さらに「個人」につながります。

全体のシステムの構造は、「政府、公官庁」から「地域サービス」そして「個人」という汎用的な構造なのです。

このような「官」から「民」への情報の提供の際に「情報の個人化」が必要です。今は、医療、気象庁ともに、ある意味「自然科学」を相手にしています。それを「社会」に公開し(社会科学)、個人のデータ(人文科学)とする。そういう知識の連携と統合が必要なのです。その基盤となるのが、オントロジーと考えています。まさに「知の構造化」が必要なのです。

医療、気象ともに、「人命がかかわる重大な責務をおったサービス」と、考えています。実現に向けて邁進したいと思います。


※ この1か月も、1500カウントに到達しました。毎月このペースをキープしたいと思います。