「Webという名の宇宙」 の中の生命体

最近、サイバー攻撃がまた新聞を賑やかにしています。サイバー攻撃の手段として多いのがコンピュータウイルスによる攻撃です。コンピュータウイルスは、他のプログラムに寄生して自分自身のコピーをつくり、多くの場合ユーザに不利益をもたらします。もちろん、コンピュータの内部のことであり、ネットワークや移動可能な媒体(USBメモリーなど)を通じで、他のプログラムに感染します。感染するのは、あくまで、プログラムやアプリケーション、システムであり、人間などの生物ではないことを明記しておきます。いってしまえば、あるプログラムAがあって、A自身が自分を「コピペ」して、どんどん増えていってしまうのです。Aがたとえばシステムの入力をしているとフリーズさせる機能があると、それだけで、ユーザに不利益をもたらしますよね。これが、コンピュータウイルスです。中には、寄生しているシステムから情報を抜き取って外部へガンガン発信するような超ワルもいます。

コンピュータウイルスを作ることは犯罪です。昔は、高度なプログラミング技術を持つ人を敬意をこめて「ハッカー」と呼んでいました。「ハッカー」の大部分は善人でしたが、中には道徳心のない人やいたずらしたい人がいて、その技能を使ってウイルスを作り、みんなをあたふたさせたのです。コンピュータネットワークがまだまだ盛んでなくて、「ハッカー」達の庭だったときにはよかったのですが、このようにワールドワイドになり、しかも、金融取引や機密文書までが飛び交うようになると、冗談では済まされなくなってしまったのです。ウイルスを作る人がしばしば「ハッカー」と言われていますが、これは残念なことで、ほんの一部のハッカーが「クラッカー(攻撃する人)」になるだけです。


さて、今日は、このウイルスについて考えてみたいと思います。上にも書いたように、コンピュータウイルスは、私たちの体に寄生するわけではありません。プログラム(アプリケーションやシステム)に寄生し増殖して、Webという宇宙の中を移動して、またほかのプログラムに寄生して増殖するのです。そしてプログラムを壊したり誤作動させたりして、プログラムを使っている人を困らせるのです。


では、私たちの体に寄生する風邪ウイルスはどうでしょうか?ここからは、コンピュータの世界(サイバー)ではなく、私たちのこのリアルな世界のウイルスについて考えてみます。風邪ウイルスは私たちの体に寄生して、我々の社会や地球や宇宙を移動しては、他の人、また他の生物に寄生して増殖するのです。これが風邪ウイルスですが、このウイルスと、コンピュータの中のウイルスは、振る舞いがそっくりなので、やはりウイルスと呼ばれるようになったのです。


さらに、リアルな世界では、ウイルスのような生命と物質との中間のような存在から、DNAをもつ菌が生まれ、菌が単細胞生物やアメーバ―になり、やがて動物や植物ができ、人間まで進化してきました。これは、DNAという生物のプログラムをどんどん進化させてきたことによるものです。その際に重要なことは、突然変異や交配です。
同じことがコンピュータウイルスでも起こらないでしょうか?コンピュータウイルスのプログラムが、突然変異を起こしたり、ウイルスのプログラム同士が交配して、どんどん進化する。そして、Webというネットワークの中に高度な知的生命体になる。しかし、彼らは、あくまでWebというサイバー空間の中の住人であり、決して人間の住むリアルな宇宙には出てこられない。彼らは、自分のプログラムを書いた人間を創造主「神」と呼ぶ。もしかすると、ネットワークの中に存在するアバターにあったら、天孫降臨なんでいうのかもしれません。

最後に、メタなことを考えましょう。このコンピュータウイルスが高度に進化してできた知的生命体が、実は、「我々人間」に相当している、としたら。私たちのリアルな宇宙のその「外」に何か「神」という存在がいて、DNAというメディアの上に生命の情報をプログラムして、そのプログラムが進化したのが我々人間という存在である。我々人間は、この宇宙の外には出られず、外にいる我々の創造主を「神」とよぶ。なんともさびしく物悲しいでしょう?秋にはぴったりではありませんか?

ちなみに最新の物理理論である超弦理論では、この宇宙は10次元であり、我々の日常はそのうちの4次元の空間に閉じ込められているそうです。残りの6次元は、我々の日常生活という宇宙から見ると「外」になるのでしょうかね。

コンピュータという人間に肉薄する知的な存在ができて、人間は、コンピュータと自分を比較することにより、知性とは何かを、より深く考えられるようになりました。Webができて、コンピュータネットワークができることにより、人間は自分の社会のネットワーク(ソーシャルネットワーク)をより深く理解できるようになりました。

コンピュータが動き始めたとき、フォン・ノイマンは、「これでこの世に2番目に頭のいいやつができた」といったそうですが、コンピュータが1台増える毎に自分の知性のランキングが1つ落ちるなんて。。。またまたさびしく物悲しい話です。

秋ですねえ〜。