まとめて提供するパッケージ化の力と仕事力

昨日は、AITC(先端IT活用推進コンソーシアム)http://aitc.jp/ の1年目の集大成である総会が開かれました。多数の方のご来場をいただき、ありがとうございました。この1年は、AITCの活動をどういう方向に持っていくかという議論から始めなければいけませんでした。昨日の総会で、副会長の田原春美さんから、「先端IT技術をまとめて、大きな社会基盤を作る。本会で扱っている技術を見ると、フロントエンド層の、ビジネスAR、ネットワークデバイス、バックエンド側のクラウド、そして全体の構想としての、コンテキスト・コンピューティング、これらを集めると社会のシステム基盤ができる。そしてこれが、本来のシステムインテグレーターとしての仕事ではないか。その活動の中心的な場にAITCがなる。」というすばらしい「まとめのお言葉」をいただきました。私もそういう方向で頑張っていきたいと思います。


さて、先日亡くなったジョブズは、こういった大きな社会基盤のインテグレータではなかったとは思いますが、(もちろんそういったおおきな設計をしたとしても天才だったと思いますが。)個人用端末という、まさにITが日常生活に浸透するのに必要なシステムのインテグレータとして抜群の才能を発揮しました。ハードからソフト、そしてデザインまで、この世に存在する抜群の技術の粋を結集して、MacintoshiMaciPodiPhoneiPadを作ったのだと思います。彼の、技術に関する豊富な知識の力、そしてそれを用いて優れたシステムにまとめる力、この2つはまさに、システムインテグレーションの力です。


また別な話になりますが、一昨日、東京大学安田講堂で、ハーバード大学のロバート・レヴィン氏のモーツァルトのお話がありました。
http://www.k.u-tokyo.ac.jp/mozart/
モーツァルトは、なぜ天才だったのか? 結論は、彼がヨーロッパ中の音楽を知りつくし、それを、各階層、各地域の聴衆に合わせてまとめあげ、提供したからだそうです。そして、そのパッケージ化した作品を演奏するとき、場所、時間、聴衆が誰かによって、違う演奏をしたそうです。ですから、彼自身も同じ演奏を再現することができなかったそうです。 レヴィン氏が、モーツァルトは最高の料理を提供するシェフのようだ、と表現しましたが、私はこの言葉が気に入りました。そこで、料理を例にして少し考えてみたいと思います。たとえば、シチューという料理があります。世界中にシチューや煮込みといった料理がたくさんありますが、地域の食材を反映してさまざまなシチューがあります。そして、同じシチューでもシェフによってレシピが違います。同じシェフでも日によって微妙に味が違うでしょう。また、シェフだってシチューを作ろうと思って購入した食材を見ても、その日のお客さんや天気などを考慮して、まったく別な料理を作ってしまうかもしれません。こういうことが自由自在にでき、それをズバリと当てるのが名シェフでしょう。

モーツァルトは、ヨーロッパ中の音楽の素材を集めて、それを選別し、選別したものをまとめて、まったく違った地域と階層の観客に提供したのです。まさに音楽の名シェフです。そのサービス精神を宿した音楽だから、現代でもその心に聴衆が共感を覚えるのだそうです。レヴィン氏のお話に、なるほど!と思いました。
余談ですが、いくらよい音楽の要素でも、合わせ方を間違えると酷いものになるということです。これをセンスが悪いというそうです。また料理のことを考えますと、世界中にスープがあります。日本のスープの代表は味噌汁です。味噌汁はうまいですね。またお菓子のチョコレートはとてもおいしいですね。ところが、味噌汁にチョコレートを入れるのはまずいです。これをセンスが悪いというのだと思います。要素同士の「相性」はとても大切ですね。
また、レヴィン氏は、ブラームスを例にとって、ブラームスは、モーツァルトのような才能がゼロと認識したうえで、ひたすら謙虚に精進したから大成したということです。凡人は、まず凡人であることを認識し、謙虚に精進することが大切なのでしょう。凡人の私はこの言葉を大切にしたいと思います。



以上の、ジョブズモーツアルトの話を合わせると「天才」に必要な要素がわかります。
1.自分の専門分野に関する並外れた技術や知識。ジョブズはIT、モーツァルトは音楽。(知識力、経験力)
2.時代の雰囲気、社会、階層、地域を知る。時代の「コンテキスト」を知る。(マーケティング力)
3.コンテキストに合わせて、技術や知識を選択して、まとめあげる。ジョブズiPadモーツァルトフィガロの結婚。(パッケージ化力)

そして、上記の、システムインテグレーションの力というのも、この3要素が必要と思うのです。

最後に、私たち凡人の仕事力も実はこの3つの力が大切と思うのです。
1.学校で勉強したりして得た知識と経験。
2.職場や上司や組織の顧客を知る。仕事のコンテキストを知る。
3.コンテキストに合わせて、自分の知識や知恵をまとめてパッケージ化して、職場や上司、顧客に提供する。

いかがでしょうか?
こんなことを考えながら、私も凡人であることを認識して日々謙虚に精進して参ります。

自然観を整理する

ちょっと思い立って、WikiPediaから、いろいろと抽出して、並べてみました。
文化史の年表です。特に自然科学に注目して、無理やりだけれども、50年刻みで分類してみました。
やはり、フランス革命からナポレオン時代にかけて、異常に天才が並んでいますねえ。
時代の雰囲気なでしょうか?
日本も全然負けていないけれど、このフランス革命ナポレオン時代に遅れをとった感があります。
しかし、それだけのことだから、日本がすぐに追いついたのも、不思議でもなんでもないですね。


750年−850年(8世紀)
空海(くうかい、宝亀5年(774年) - 承和2年3月21日(835年4月22日))

950年−1000年(10世紀頃)
 紫式部 (975年頃 − 1020年頃)
 清少納言


1250年−1300年(13世紀後半)
 マルコ・ポーロ(伊: Marco Polo、1254年9月15日 - 1324年1月8日)


1400年−1450年(15世紀前半)
 ヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg、1398年ごろ-1468年2月3日):活版印刷の開発
 世阿弥(ぜあみ、世阿彌陀佛、正平18年/貞治2年(1363年)? - 嘉吉3年8月8日(1443年9月1日)?)

1450年−1500年(15世紀後半)
スペイン・ポルトガル :大航海時代(スペイン・ポルトガル
 クリストファー・コロンブス(Cristoforo Colombo、英: Christopher Columbus、1451年頃 - 1506年5月20日):アメリカ大陸発見
 ヴァスコ・ダ・ガマ(Vasco da Gama, 1469年頃 - 1524年12月24日):喜望峰航路の発見
イタリア :メディチ家の栄華
 レオナルド・ダ・ヴィンチ (Leonardo da Vinci, 1452年4月15日 - 1519年5月2日):万能の天才
 ルカ・パチョーリ(Fra Luca Bartolomeo de Pacioli、1445年 - 1517年):複式簿記
ヨーロッパ大陸北部 :宗教改革
 ニコラウス・コペルニクスラテン語名: Nicolaus Copernicus、ポーランド語名: ミコワイ・コペルニク Mikołaj Kopernik、1473年2月19日 - 1543年5月24日):地動説
 マルティン・ルター(Martin Luther、1483年11月10日-1546年2月18日):プロテスタント


1550年−1600年(16世紀後半)
イギリス :学問の体系化(エリザベス時代、大英帝国
 フランシス・ベーコン(Francis Bacon, Baron Verulam and Viscount St. Albans、1561年1月22日 - 1626年4月9日)
 ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare、1564年4月26日(洗礼日) - 1616年4月23日(グレゴリオ暦5月3日))
ヨーロッパ大陸 :自然科学の勃興
 ガリレオ・ガリレイGalileo Galileiユリウス暦1564年2月15日 - グレゴリオ暦1642年1月8日)
 ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler、1571年12月27日 - 1630年11月15日)


1600年−1650年(17世紀前半)
 ピエール・ド・フェルマー(Pierre de Fermat、1607年末または1608年初頭- 1665年1月12日)


1650年−1700年(17世紀後半)
イギリス :近代物理学の始まり
 サー・アイザック・ニュートン(英: Sir Isaac Newton, ユリウス暦:1642年12月25日 - 1727年3月20日グレゴリオ暦:1643年1月4日 - 1727年3月31日)
 ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz, 1646年7月1日(グレゴリオ暦)/6月21日(ユリウス暦) - 1716年11月14日)
 ロバート・ボイル(Robert Boyle、1627年1月25日 - 1691年12月30日)
日本 :近代社会の始まり
 近松 門左衛門(ちかまつ もんざえもん、近松門左衞門、1653年(承応2年) - 1725年1月6日(享保9年11月22日)
 関 孝和(せき たかかず/こうわ、寛永19年(1642年)3月? - 宝永5年10月24日(1708年12月5日))

1700年−1750年(18世紀前半)
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハJohann Sebastian Bach, 1685年3月31日(ユリウス暦1685年3月21日) - 1750年7月28日)
 ダニエル・ベルヌーイ(Daniel Bernoulli, 1700年2月9日 - 1782年3月17日)
 レオンハルト・オイラーLeonhard Euler, 1707年4月15日 - 1783年9月18日)
 平賀 源内(ひらが げんない、享保13年(1728年)- 安永8年12月18日(1780年1月24日))
 
1750年−1800年(18世紀後半)
 ナポレオン・ボナパルト(Napoléon Bonaparte、1769年8月15日 - 1821年5月5日 )
 ジャック・アレクサンドル・セザール・シャルル(Jacques Alexandre César Charles, 1746年11月12日 - 1823年4月7日)
 ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ男爵(Jean Baptiste Joseph Fourier, Baron de、1768年3月21日 - 1830年5月16日)
 ピエール=シモン・ラプラス(Pierre-Simon Laplace, 1749年3月23日 - 1827年3月5日)
 ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ(Joseph-Louis Lagrange, 1736年1月25日 - 1813年4月10日)
 アドリアン=マリ・ルジャンドル(Adrien-Marie Legendre, 1752年9月18日 - 1833年1月10日)
 ジェームズ・ワット(英: James Watt, FRS, FRSE、1736年1月19日 - 1819年8月25日)
 アダム・スミス(Adam Smith、1723年6月5日(洗礼日) - 1790年7月17日)
 ジョージ・ワシントン(英語: George Washingtonグレゴリオ暦:1732年2月22日 - 1799年12月14日(ユリウス暦:1731年2月11日生まれ))
 ベンジャミン・フランクリン(英: Benjamin Franklin, ユリウス暦1706年1月6日(グレゴリオ暦1706年1月17日) - 1790年4月17日)
 ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト(ドイツ語:Wolfgang Amadeus Mozart, 洗礼名ヨハンネス・クリュソストムス・ウォルフガングス・テオフィルス・モザルト。 1756年1月27日 - 1791年12月5日)
 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(独: Ludwig van Beethoven、1770年12月16日ごろ[2] - 1827年3月26日)
 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテJohann Wolfgang von Goethe[1]、1749年8月28日 - 1832年3月22日)
 伊能 忠敬(いのう ただたか、1745年2月11日(延享2年1月11日) - 1818年5月17日(文化15年4月13日))
 杉田 玄白(すぎた げんぱく、享保18年9月13日(1733年10月20日) - 文化14年4月17日(1817年6月1日))
 華岡 青洲(はなおか せいしゅう、宝暦10年10月23日(1760年11月30日) - 天保6年10月2日(1835年11月21日))


1800年−1850年(19世紀前半)
 ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス( /ˈɡaʊs/; ドイツ語: Gauß listen(ヘルプ / リンク), ラテン語: Carolus Fridericus Gauss)(1777年4月30日 - 1855年2月23日)
 エヴァリスト・ガロア(Évariste Galois, 1811年10月25日 - 1832年5月31日)
 ニールス・ヘンリック・アーベル(Niels Henrik Abel、1802年8月5日 - 1829年4月6日)
 ゲオルク・フリードリヒ・ベルンハルト・リーマン(Georg Friedrich Bernhard Riemann, 1826年9月17日 - 1866年7月20日
 ニコラ・レオナール・サディ・カルノー(Nicolas Leonard Sadi Carnot、1796年6月1日 パリ - 1832年8月24日 パリ):熱機関
 オットー・エードゥアルト・レーオポルト・フォン・ビスマルク=シェーンハウゼン(独: Otto Eduard Leopold von Bismarck-Schönhausen, 1815年4月1日 - 1898年7月30日)
 カール・ハインリヒ・マルクス(Karl Heinrich Marx, 1818年5月5日 - 1883年3月14日)
 佐久間 象山 文化8年(1811年)2月28日 元治元年(1864年) 7月11日
 緒方 洪庵(おがた こうあん、文化7年7月14日(1810年8月13日) - 文久3年6月10日(1863年7月25日))
 大村 益次郎(おおむら ますじろう、 文政7年5月3日(1824年5月30日) - 明治2年11月5日(1869年12月7日)
 安藤 広重(うたがわ ひろしげ、寛政9年(1797年) - 安政5年9月6日(1858年10月12日)
 葛飾 北斎葛飾 北齋、かつしか ほくさい。宝暦10年9月23日?〈1760年10月31日?〉 - 嘉永2年4月18日〈1849年5月10日〉)



1850年−1900年(19世紀後半)
 ジェームズ・クラーク・マクスウェル(James Clerk Maxwell1831年6月13日 - 1879年11月5日):古典電磁気学の完成
 ウィリアム・トムソン(William Thomson、ラーグスのケルヴィン男爵(Baron Kelvin of Largs)、1824年6月26日 - 1907年12月17日):絶対温度
 ルドルフ・ユリウス・エマヌエル・クラウジウス(Rudolf Julius Emmanuel Clausius, 1822年1月2日 - 1888年8月24日):エントロピー
 ジュール=アンリ・ポアンカレ(Jules-Henri Poincaré、1854年4月29日 - 1912年7月17日)
 ダフィット・ヒルベルト(David Hilbert, 1862年1月23日 - 1943年2月14日)
 福澤 諭吉(ふくざわ ゆきち、天保5年12月12日(1835年1月10日)- 1901年(明治34年)2月3日)
 北里 柴三郎(きたざと しばさぶろう、1853年1月29日(嘉永5年12月20日) - 1931年(昭和6年)6月13日)
 夏目 漱石(なつめ そうせき、1867年2月9日(慶応3年1月5日) - 1916年(大正5年)12月9日)


1900年−1950年(20世紀前半)
 アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein 、1879年3月14日 - 1955年4月18日)
 野口 英世(のぐち ひでよ、1876年(明治9年)11月9日 - 1928年(昭和3年)5月21日)
 寺田 寅彦(てらだ とらひこ、1878年明治11年)11月28日 - 1935年(昭和10年)12月31日)

2011年 上期 成果発表について

2011年上期が終了し、下期に突入しました。

私は、本務として、下記の研究会で口頭発表を行いました。


第24回セマンティックウェブオントロジー研究会
http://sigswo.org/A1101_program.html

                                                                                                                                                              • -

■開催日時:2011年6月22日(水)−23日(木)
■会場:浜名湖かんざんじ荘(http://www.kanzanji.com/ )
■テーマ:「構造化知識の構築・利用の実際」または「一般」

<6月22日(水)>
16:00〜16:15 SIG-SWO-A1101-07
解剖学オントロジーを用いた情報抽出のための機能要件の検討
http://sigswo.org/papers/SIG-SWO-A1101/SIG-SWO-A1101-07.pdf
○湯本正典,今井健,桜井亮太,林亜紀,佐藤恵,梶野正幸,河添悦昌, 大江和彦
東京大学医学部附属病院 企画情報運営部) 

また、研究室の外の活動として、
● 先端IT活用推進コンソーシアム : http://aitc.jp/index.html 
● Linked Open Data チャレンジ(LODチャレンジ)実行委員会:http://s-web.sfc.keio.ac.jp/lod/lodchallenge.html
● セマンティックWeb委員会:http://s-web.sfc.keio.ac.jp/
に参加いたしております。



さて、先日、Linked Open Data チャレンジ(LODチャレンジ)実行委員会の成果として、

LODチャレンジ Japan 2011
http://lod.sfc.keio.ac.jp/challenge2011/index.html

を実施するに至りました。
2011年10月11日(火)より応募の受け付けを開始しました!!
募集要項をお読みになり、積極的にご参加ください!
http://lod.sfc.keio.ac.jp/challenge2011/outline.html

この活動は、2011年3月号の情報処理学会誌「情報処理」に掲載された、
•《特集》 リンクするデータ(Linked Data)
http://www.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/mokuji.asp?category1=Magazine&vol=52&no=3
http://www.amazon.co.jp/dp/B004RE1WKW
のコンセプトを社会の中で実現しようという試みとして開催されます。

よろしくお願い申し上げます。


そして、先端IT活用推進コンソーシアム の総会が、もうすぐ開かれます!
http://aitc.jp/events/20111021-Soukai/index_v3.html

先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)
『活動発表会』ならびに『第二回総会』開催のご案内
日 時:2011年10月21日(金)
    10:00−12:00 活動発表会
    13:30−17:15 第二回総会(招待講演、議案説明、2011年度活動紹介)
    17:30−19:30 懇親会

会 場:
   日本ユニシス株式会社 本社(豊洲)29F大会議室

みなさまにご参加いただき、ご指導を賜れれば幸いです。


さて、最後に、セマンティックWeb委員会ですが、この成果発表は、
2012年3月8日(木)
慶應義塾大学 三田キャンパス 北館
にて 9時から18時30分(予定)
セマンティックWebコンファレンス2012
として行われる予定です。
こちらも、併せてご参加いただければ幸いです。

なお、今年のセマンティックWebコンファレンス2011は、下記のように
行われました。
http://s-web.sfc.keio.ac.jp/conference2011/
セマンティックWebコンファレンス2011
〜日本にも広がるLOD〜

実は、ここで、「LODチャレンジ」の概要が発表になり、今月の「LODチャレンジ2011」の開催に至ったわけです。
このコンファレンスに参加すれば、セマンティックWebの近い将来がわかる!ということにして、宣伝にかえたいとおもいます。

これからもみなさまのご指導をよろしくお願い申し上げます。

41歳を迎えて

本日、41歳を迎えました。40歳の一年は、本当にいろいろとことがありました。しかし、なんとか無事に今日を迎えられたのも、周りで支えてくださっている方々のおかげと感謝しています。

さて、昨年40歳を迎えたときに、下記のような文章を書きました。

http://d.hatena.ne.jp/masanori-yumoto/20101013/1286912885

40歳を節目の年と書きましたが、40歳は、本当に激動の年でした。

2010年 秋 現職の公募に応募。
2010年 12月に結婚。新婚旅行。
2011年 3度の選考を経て、1月に現職の採用が決まり、前職場に退職願を提出。
職場を去る準備をしているときでしたが、
2011年 3月11日 東日本大震災 
この日は、年休消化でたまたま年休を取っていました。
2011年 4月 前職を退職し、現職に赴任。
2011年 6月 舘山寺で行われた研究会で、成果発表。
2011年 8月 研究室の軽井沢合宿。
2011年 9月 夏期休暇で長野へ行き、先祖の墓にご報告。
このとき東京は大変な大雨でした。
こうしてみると、本当に公私ともに激動でした。
また、ここには書けませんが、プライベートでも悲しいことがいくつかありました。

その一方で、たくさんの旧友とのうれしい再会がたくさんありました。
持つべきものは友ですね。
新しい家庭を持って、やる気も出てきました。

いろいろありましたが、41歳は健康に気を付けて、平穏無事な一年を送りたいと思います。

視覚情報を通じた人間の他者認知プロセス

昨日、日産財団認知科学シンポジウム 「人と機械のつながりと未来」に出席いたしました。

日産財団認知科学シンポジウム 「人と機械のつながりと未来」
http://www.nissan-zaidan.or.jp/sympo/sympo110319.html

中心は、視覚情報を通じた人間の他者認知能力でした。

視覚情報は、人間の眼を通じて入ってきた光による情報をもとに得られます。光は、網膜に「逆像」を描き、それを脳が処理して、人間は他者を認識します。

さて、物理学者の考えだと、光を網膜で検知したときには、熱揺らぎがあまりに大きく、正しい像は到底得られないという結論に達します。これは、東京大学理学部在学中に、量子光学の小林孝嘉先生がよくおっしゃっていました。計算上、網膜の像はかなりぼやけてブレが大きく、よくこれでものが見えていると不思議な感じがすると、いうことでした。


しかし、この疑問も、このシンポジウムで何となく解決できた気がします。人間は、ものを見るとき、かなり「パターン」で認識しているのです。たとえば、人の顔たと認識したとき、まず顔の形や顔のパーツの配置の「ひな形」を頭に思い浮かべ、それを詳細化していくようなのです。


ひとつ、私たちがパターンがあるから詳細を区別できる例をあげましょう。これは、このシンポジウムでも紹介された例で、「倒立の顔認識」とよばれているようです。
下の写真をご覧ください。


イギリスのサッチャー元首相のお顔が2つ並んだ写真が2組あります。どちらの組みも同じ写真ですが、上下がさかさまになっています。2つの写真のうち、片方は「変顔」です。しかし、上下がさかさまになった写真の場合、「変顔」と認識するのがとても難しくなっています。なかなか「変顔」と思えませんし、さらにどこが変かを指摘するのは、上下がさかさまだとかなり難しいです。
つまり、まず顔を認識して、その上下が正しい顔の配置のパターンがある程度認識されて、そこにパーツを当てはめて、「視覚情報による認知」を行っていると想像できます。顔の上下がさかさまになっただけで、変顔がわからなくなるなって、衝撃でした。


このような感じの、ご講演をはじめ、目の錯覚(錯視)のご発表などがあり、とても興味深いものでした。我々の眼で見ていることは、かなり先入観に依存した「いい加減」なものなのですね。


世界地図も上下がさかさまになると途端にわからなくなる例がよく書籍にも出ています。



このシンポジウムの基調講演は、原島博先生のお話でした。シャノンに情報理論に始まり、意味的情報論、ネットワーク外部性によるネットワークの価値(つながることに価値がある)、情報量ゼロの通信(つながっていることの確認)などのお話もあり、これはとてもチャレンジングなお話でした。私の考えている、syntac情報量とsemantic情報量、そして情報をやり取りする基盤のネットワーク価値を統合的に把握する量の考察とも非常にかかわりが深いようで、私も勇気をいただきました。


情報と認知(認識)の研究はとても面白く、これからがさらに楽しみです。


※ PV数が 10000を越えました。ありがとうございます。

ジョブズよ! 「夢」をありがとう!

今日の通勤電車の中で、ジョブズの死去をしりました。仲間がFacebookに書いているのを読んで、第一報を受けました。正直ショックで、立ちくらみがしました。


私にとってジョブズは「夢」を与え続けてくれた人でした。大学院時代にMacintoshユーザとなりました。しかし、会社に入ってからは、周りの人たちとの整合性をとり、「効率を上げるために」Windowsユーザとなり、彼を裏切りました。その後、iPodのユーザとなり、今でもiPodは私の友です。現在は、iPhoneiPadが登場して世間を盛り上げていますが、このブームに私は乗り遅れ、まだ触れたことすらありません。このように、ジョブズは常に我々の時代の先頭を走り続けてくれました。そして、それにより、私は「夢」を見ることができたのです。明るい未来の「夢」です。


しかし、現在の多くのITは夢を与えているでしょうか?ただ単に、「効率を上げるために」ITを使ってはいないでしょうか? 「効率を上げること」と「夢を追うこと」は、完全に相反する概念ではありませんが、多くのケースで相反するものとなって現れるでしょう。たとえば、日常生活で、「効率をあげるために」あくせく必死になって働きます。そして、それは、一生懸命働いてお金を貯めて楽しく幸せに暮らすためです。「効率を上げる」のは、あくまでも手段であり、目的ではありません。「楽しく幸せに」暮らすことが目的です。つまり、ジョブズは、ITを「楽しく幸せに暮らす」という人間本来の目的を直に果たすために用いることを提唱したのです。ところが、世の中、特に組織や企業のITはどうでしょう。「効率を上げるために」使っていませんか?その段階で、ITは(楽しく幸せになるための)「手段のためのそのまた手段」になってしまっているのです。これではITの存在が悲しすぎます。


これを企業にたとえてみると、「夢を実現する商品」というのは売り上げの増加に貢献します。しかし「効率を上げる仕組み」は原価低減に貢献するのです。同じ利益を上げるにも、売上増とコスト削減、どちらが夢がありますか?コスト削減のためにITを導入し、挙句の果てに人を削減する。どんどん夢から遠ざかってしまいます。今の世界的恐慌も意外とこのようなところにあるのかもしれません。


このような風潮と闘い続け、「夢」を提案し続けた男がジョブズなのではないでしょうか?


先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)の副会長である、インフォテリアの平野洋一郎さんが、AITC Day 2011(第1回中間活動報告会) http://aitc.jp/events/20110223-Day/index_v3.html で、「夢を見て、管理を嫌ったIT技術者が、いつから、管理側に回り、夢を見なくなったのか?」との問いを発せられました。まったくごもっともで、いつからIT技術者は管理側に回り、夢を見なくなったのでしょう?


私の子供のころから、鉄腕アトムドラえもんは、私たちの夢でした。ITの基礎分野である人口知能は、これらを実現するはずでしたし、今でも実現するはずのものです。IT技術者はいつからあきらめがこんなに早くなったのでしょうか?


IT技術者に、夢を簡単にあきらめてはいけないと言い聞かせ続けてくれたのがジョブズでした。私たち日本人は、鉄腕アトムドラえもんを実現し、ジョブズが与えてくれた夢の実現を目指しませんか?私は目指したいと思います。

ジョブズのご冥福をお祈り申し上げます。

2011年上半期を終えて、そして下半期に突入して。

4月に大江先生の研究室に採用していただき、ちょうど半年がたちました。大江先生はじめ、研究室の先生方には、本当にたくさんの貴重なご指導を賜りました。御礼申し上げます。また、セマンティックWeb委員会、LODチャレンジ実行委員会、先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)でも、多くの研究者、企画関係の先生方、優秀なIT技術者と知り合うことができ、とても有意義でした。LODで学んだように、人と人との絆(つながり)の大切さを知りました。



結局は、ソーシャルネットワークがいかに重要かということです。これは、ネットワークの概念でいうと、「ノード」よりも「リンク」の重要性に気づき始めた証拠です。つまり、社会では、「個人」よりも「個人同士のつながり」つまり、人脈とか、コミュニティとか、同好会とか、クラブとか、そういうことの方が実は重要なのではないかという、日本人にとって極めて自然な、当たり前のことに気づいたのです。また、私の出身の分野である物理学では、素粒子よりも、その相互作用が重要であると考えることもあります。統計物理、物性理論で学位を頂いた私としては、この流れはとても自然に思えます。



さて、社会を見ると、どうも、西洋の作った社会システムがおかしくなっているようです。金融システムをはじめとした経済システム、さらには、西洋的な国家のシステムまでおかしくなろうとしています。なぜでしょうか? これら「西洋」のシステムの思想の基盤にあるのが、「個人主義」です。個々の人間自体の存在が重要であり、その権利を守ること。それが重視されていたのです。しかし、それよりも大切だったことは、社会のつながり、人と人とのつながり、絆だったと、最近改めて人々が気づき始めたのだと思います。そして皮肉にも、それを認識させてくれたのは、西洋科学の粋を集めて実現した技術である、現代のIT(情報技術)だったのです。また、日本では、この大震災以降、現実社会における絆がいかに大切かを思い知ることができます。



このように考えてみると、社会を中心としたと考えられる「社会主義」という思想でさえも、社会はそこで生活する個人のために存在していたと思えるのです。社会主義のように、トップダウンで与えられる社会ではなく、ひとりひとりが自主性をもって地道に築き上げていくボトムアップ的な社会形成が、本当に求められているのだと思います。そして、このボトムアップ的な人脈により社会を築いていくことは、実は日本人の性格にあった、慣れ親しんだ社会の形成の仕方ではないでしょうか?


実は、今、日本にとって、今までにない「チャンス」が到来していると、私は感じるのです。絆やご縁、ご近所さん、世間様、といった日本で大切にされてきた美しい概念がグローバルスタンダードになる時代が来たのだと思います。



こんなことを感じながら、2011年の上期を終えました。やっといろいろと上期の整理が着きつつあるところです。下期の研究活動に入りますが、今後ともみなさまのご指導をよろしくお願い申し上げます。